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ー用語辞典ー

大陸横断鉄道

またの名を『ヨルムンガンド号』。怪物のような轟音を上げながら地を駆ける巨大な漆黒の蒸気機関車。

5、6階のビルに相当する高さを誇る寝台列車でもあり、高級ホテルに相当する設備を備えていることから『移動都市』とも形容される。

 

この大陸を西の果てから東の果てまで、およそ7日〜10日間かけて横断するこの国の運輸の生命線でもあり、東西を結ぶほぼ唯一の移動手段と言っても良い。

この大陸は中央の巨大な海峡と《大ティアマット帯》によって分断されているため、東西を行き来するならこれか竜便屋の力を借りるしかない。

 

 東西有数の都市を経由しながら東西の首都を結ぶため、この大陸に産まれた子供なら一度は往復旅行を夢見るもの。

ヨルムンガンド号自体の内装や外観も壮麗なものなので被写体として申し分ない。

 

 

 

 なお、実は現在走っているのは二号車。一号車はかつての大規模脱線事故により消失している。

 

図は宿泊する際の料金の目安である。

 

※補足※

特定区間(砂嵐がひどいとか海峡を越えるとか)以外は屋上スペースが開放されいてて、なんならビアガーデンみたいに飲食しながら景色を眺めることができる。

1〜2等車両は個室ごとにベランダもあるのでルームサービスを頼んでリッチに過ごすことも可能。

風のさかな亭

魔塔都市上層の外れにあり、都市を一望できる2階建てのコンドミニアム。屋根の上に風見鶏ならぬ風見鯨がついていることがその名の由来。

 

一部が崖にせり出しているのだが、これは元々二倍の規模を誇る建物だったのだが、竜の衝突事故により下部の崖が崩れ、建物が半壊してしまったことが原因。

敷地内には手入れの行き届いた花園が広がっており、一階に拵えられた共同スペースでは都市の景観と花園を同時に眺めることができる。

 

朝・夕のまかない付きで滞在期間は一日から受け付け可能。

地下は付近の崖の竜用の巣と直結していることもあって、竜や竜便屋の滞在先として人気が高く、都市の人々には竜と間近で触れ合える施設としても親しまれている。

《隻眼の灰鷹》本社事務所

魔塔都市の中心に位置し、都市内外の交通の要所となっているカダス大駅舎――の、一階に連結する形で運営されているのがこのジャンゴ社本社。

キリオたち竜便屋と竜たちの詰め所である。

外は赤煉瓦、中は大理石で形作られ、歴史ある風体が印象的。

 

一階で郵便集配や観光案内など各種サービスを受け付けており、二階が竜便屋たちの事務所兼控室。

泊まり込みで勤務する時のためにベッドルームや簡易的なシャワールームも備えており、社員食堂もある。

実はイザヤは家に帰るのがめんどくさすぎてほぼ住人になっているとかいないとか。

隣のビジネス層向けホテルと連結しているため、ホテルと協力してスムーズに観光案内ツアーができる体勢をとっているのが売り込みポイントの一つ。

またお土産コーナーもあり、竜便屋用の頑丈な作りのゴーグルやブーツ、社員のサイン入り葉書や限定切手なども販売している。

 

ちなみに、数ある航空会社の中でもかなりゆるい気風で、許可さえ降りれば事務所・ベッドルーム・シャワールーム以外は見学自由。

都市の子供たちや観光客向けに職業体験も執り行っており、建物の景観の良さもあって人々には一種のレジャー施設として認識されている。

冬薔薇亭(ふゆそうびてい)

魔塔都市で長期滞在を予定しているならホテルはとりあえずここ、と観光ガイドで必ずと言ってもいいほどオススメされるのがこの冬薔薇亭である。

元々は地元の名士の迎賓館だったという立派な建物を改造した歴史ある荘厳な外観や内装が最大の特徴。

 

ホテル自体は観光都市である魔塔都市内にも多数存在しているしそちらの方が安上がりなものが多いのだが、オススメされる理由の一つには、年中都市内を飛んでいる竜や竜便屋の衝突事故被害がほぼない立地にあるというのが大きい。

食事中も就寝中も安心して過ごせるわけである。

料理も東大陸各地の名物料理を取り揃えており、地下のレストラン街で好きなものを自由に楽しめ、サービスも行き届いていると至れり尽くせり。

 

更に裏手には棚状の崖を利用した、地下水を蒸気機関で温めて流した温泉もあるので、都市を囲む山々を眺めながら雪見風呂を堪能することもできる。

宿泊料金は少々割高だが、都市内観光も含めたパッケージプランも提供しているため、大人数・あるいは単身でのんびり観光写真を撮りながら料理を楽しんで温泉でゆっくりしたいという中流所得者向けの施設である。

 

ちなみに、ミカ・ウが現在お世話になっている実家でもある。

 

余談だが、冬薔薇亭の名の由来は元々の持ち主が薔薇好きだった関係で内装の随所に薔薇の意匠が施されており、敷地内に薔薇園もあるため。 これも見どころの一つ。

突角隧道(カント・ラテロ)

またの名を『ラテロ商店街(カント・ラテロ)』。

魔塔都市には大きな商店街が三つ存在しており、その中でも一番大きい。

竜と竜便屋の通り道にある上、特定の時期には竜便屋レースのコースともかぶるため、年中衝突事故が絶えないことからその名がついた。

都市を建設する過程で出現した謎の巨大な石橋の上に街並みが形成されていて、立ち並ぶのは様々なレストランや民芸店。

鍋料理から海鮮から各地の名物料理から、東大陸中の料理を楽しむことができ、かつ土産物を選ぶにも事欠かないと、とても一日では回りきれない観光客向けの散歩コースである。

 

都市ができたばかりの頃に建てられた色とりどりの煉瓦壁の街並みも印象的。すぐ隣には都市を一周する蒸気機関車の環状線も通っているため、アクセスしやすさもあって都民にも人気の商店街。いつも人でごった返している。

 

ただし、二十分に一回の頻度で竜が通りかかるので強風には注意されたし。

※なお、イメージボードのスクリーンショットは作者の作画ミス。本来は上空から見ると上の図のようになっている。

鬼岩都市(カラド・ティルフィング)

東大陸の七割近くを占める大環状連峰の麓の一つ。険しい断崖がそそり立つ山間には、かつて大地を飲み込むほど巨大な竜が棲んでいたという。

その竜の骸が長い年月と様々な偶然を経て、世にも奇妙な岩山を形成するに至ったとされるのがこの鬼岩都市である。

 

巨竜の骸から削り出した、風の強さを知らせる色とりどりの鳴子が鳴り響く様から『骨の都』とも呼ばれているこの都市は、竜の骸に宿る不思議な力の影響か、常冬の大陸にあるにも関わらず暖かい季節になると緑に覆われ、資源も豊富であることから自然と集落が形成されるに至った経緯を持つ。

 

また、付近に東洋との交易の玄関口となっている都市があるためか、建築様式にこの大陸ではあまり見られない東洋の文化が見られることでも知られ、これらの関係から深山幽谷に竜が潜む独特の絶景を楽しもうとする観光客が絶えない観光都市の一つとしても賑わいを見せている。

 

竜の飛ぶ姿と絶景を同時に楽しめる、という意味では魔塔都市も当てはまるのだが、鬼岩都市付近はあまり人慣れしていない、より野生に近い状態の竜の縄張りが乱立しているため、自然体の竜を拝みたいというのであればこちらがオススメである。

名産は「鬼岩のシュークルート」など。

 

※ただし、人馴れしていないため近づく際には細心の注意を払う必要がある。特に蜜月期(繁殖期)は一部の絶景ポイントが竜の縄張りとかぶっているため、出入り規制がかかるほど。

※落下事故も多いので注意されたし。

この世界には太陽と月はない。代わりに燃えるように赤い星と澄んだ青色の星が浮いており、これが太陽と月の代わりになっていて、それぞれ『焔星(ほむらぼし)』、『澪星(みおぼし)』と呼ばれている。

名前と色が違うだけで公転周期などは太陽と月と同じ。なので、作中では季節もそれに準じた呼び方になる。

春→準焔節(じゅんえんせつ)

夏→本焔節(えんせつ)

秋→準澪節(じゅんれいせつ)

冬→澪節(れいせつ)

特に厳冬期は『本澪節(ほんれいせつ)』と呼ばれることもある。

 

月がないので暦の区切り方も異なる。この世界では十二の星座の周期に合わせて暦が定められていて、例えば牡羊座が見える期間だったら『白羊節』、牡牛座が見える期間だったら『金牛節』といった感じになる。

ただ、特に重要ではないので作中ではサラッとでてくるだけ。いわゆるフレーバー要素である。

酒箸(イクパスイ)

ダーナ人なら必ず持ってる神具。見た目は複雑な模様が施された小さな木の棒。

母方の家系から受け継ぎ、一族の身分と功績を証明すると共に重要な祭事などでは大地と空と命あるものの仲立ちを務める、とされるもの。お守りのようなものなので、信心深いダーナ人がこれを胸に抱いて願掛けしている姿を時折見ることができる。

イザヤも持っているらしいが、イザヤは諸事情で父親から酒箸を受け継いだようである。

竜涙花(ライエット)

極寒の大陸のため植物は食料よりも貴重。 特に花は西側の生花産業専門の都市からしか輸出されないため、高価であるにも関わらず東西問わず人気がある。

 庶民が安易に手にできるのはブリキの花か玩具のドライフラワー。 木は大陸規模で杉の木が群生している。

 

貴重な野生花では『竜涙花(ライエット)』というものが有名。 モデルは山茶花で、竜の涙がしみ込んだという、淡い紅色のような原種の他にも色々な品種が存在し、中でも青薔薇のように製造が非常に難しく稀少なものは『八重霞(ライエット・キルヒリオ)』と呼ばれている。

 

その独特の色合いが染料としてもてはやされた時代もあったが、厳しい寒さでもたくましく育ち花を咲かせることから、『この花のように雪に埋もれることなくたくましく育つように』という願いを込めて子供の名につける親が多い。

ちなみに、登場人物のキリオとライの名の由来ともなっている。

禁酒法

娯楽も嗜好品も少ない世界のため、酒は特にその貴重な嗜好品の代表格として大人気である。

気候の関係で東大陸は穴蔵を掘っただけで簡単な冷暗所になるし、西大陸も蒸気機関のおかげで安定した気温を簡単に保てるため、大陸各地で醸造が盛ん。 穀物や果物を使ったお酒以外にもマタタビ酒、馬乳酒、蜂蜜酒、わりと何でも開発済。

酒の輸出入も盛んである。

 

しかし、西大陸は完全環境都市が生活圏という事情から、冷暗所を作りすぎると生活区域そのものを圧迫してしまうため、近年とうとう一部の都市で酒税が実施され醸造&保管数制限がかけられてしまった。

 そう、禁酒法の時代到来である。

 

このため、わざわざ東大陸に行って酒を飲んだり東から酒を密輸入する人間が増えている。 手引をする竜便屋や東側にとってはいい収入源のため、東大陸では黙認されているが、西側の政府は当然いい顔をしないため国際問題に発展しつつある。

どうなることやら。

 

余談だが、東側のお酒はアルコール度数が高いものが多いため窓拭き剤や消毒薬品として用いられることが多く、そのまま飲む人間はさすがに滅多にいない。  

酒好きも多いが、そもそもロシア並に寒いので酒で身体を暖められないと死ぬという事情がある。

上級学校

この世界の義務教育は基本的に中高一貫の九年制で、10~15歳までの前期6年間及び16~18歳までの後期3年間の上級段階という区分で教育課程が組まれている。 入学するためには基礎学校(5歳~9歳まで)の進路に関する所見に基づいて決定されるが、一部では試験が行われるところもある。

 

大抵の学校は大学入学資格を得ることが最終目的だが、東大陸では職業訓練を受けることもできる場合が多く、卒業後に大学に進学する者とすぐ定職に就く者の割合は半々といったところ。 

これは東大陸の多くの家庭が大学の高額な学費を用意できないという事情が関係している。

 

この関係で、運転免許取得可能な年齢も東西で異なり、西大陸は基本的に20歳から。

東大陸は卒業後すぐ働きに出る者が多いという関係から15歳以上から取得可能。 

法的に成人として扱われる年齢も、西は20歳からだが東は18歳からである。

宗教

《愛し児たちの島》にはあらゆるものに神性を見出す八百万信仰に近いものが浸透している。 人間・動植物問わずこの世のものは全て等しく『大いなる星の意志』により生み出された、大いなる流れの中にある一つの意志であり、自然現象にも何らかの意志が宿っているとするもの。

要は生命が生まれたのも自然現象が生まれるのも、人知を超えた力が関わっているとする考え方である。

 

このため言霊や想念の力が強く世界に影響を及ぼすと信じられ、生命の持つ正の要素が維持されている間は世界も活気に満ちるが、負の要素が溜まると災害や病気が起こるとされている。

 

これも東西で認識が全く異なる。 蒸気機関文明が発展する過程で西側ではすっかりこの信仰が廃れてしまい、今はもう知らない人間の方が多い。 逆に東側では生活に強く結びついていて、子供が負の要素を生み出すような、道理を外れた行為に走らないようにする寝しなのおとぎ話として有名である。

星占い

東西の格差問題の項目でも解説したように西大陸は空が見えないため、文献や絵本などでしか星を知らない人間が多い。

 しかし娯楽の少ない世界観のため、占いは貴族の間で大流行している。星占いもその一つ。

世界観的には、東大陸発祥の星占いが西側に伝わっているという感じ。

 

ちなみに東大陸では、天候などで吉兆を占う文化が根づいているため星占いはとても重要。 皇室お抱えの占星術師などがいて大変な高給取りである。腕前はともかく。

高貴なる青or白

いわゆるファンタジー髪色は染めた場合でもない限り存在しない世界なのだが、青髪と白髪は地毛で存在する。

しかも皇族の血縁しか持たないのでかなり特別で、ゆえに『高貴なる青or白』と呼ばれもてはやされている。

西は青薔薇を、東は白百合を国旗や重要な勲章に用いていることもその色が特別視される要因で、東西それぞれ青い礼服or白い礼服は皇族関係者しか使ってはいけないという暗黙の了解がある。