Worldview

ー愛し児たちの島の概要ー

愛し児たちの島(テオラ・ルスニキエ)

いまではないいつか、ここではないどこか。氷の海の中央に浮かぶ小さな群島大陸で、胎内で身を寄せ合う双子の胎児に例えられる形状をしている。

ルスニキエとはこの大陸の古い言葉で『鳥のように羽ばたく子供たち』という意味。

 

東はアウィセニス地方、西はアレファルテ地方と呼ばれ、この二つは大陸中央を突き抜ける巨大なウインドシアーー《大ティアマット帯》によって真っ二つに分断されている。

しかし近年、蒸気機関技術が発達し、東西を交互に横断する大陸横断鉄道が開通したことで交流が本格化した。

 

一年を通して上空に停滞している分厚い雪雲の影響で大部分は寒冷な気候に覆われている。

夏季と冬季の気温差は30~75℃にも及び、東大陸の場合、厳冬季は平均-20~-35℃にもなる。

逆に西大陸南部は比較的温暖な気候で、四季の変化が非常に明瞭である。

人類連邦

東西を隔てる中央黒海の西海岸側沿いのガヴィオータ州と内陸のミグラトリオ州、そして西ゼニス海沿いのオワゾー州からなる一大地域に点在する完全環境都市群からなる連合国家。

首都はミグラトリオ州最大級にして最古の完全環境都市――《槍城都市イストラカン》

 

男子を代々の皇帝に仰ぐアルフマン皇家が中心となって興した国で、高度な文明を誇るものの、それは国土資源の枯渇が影響しているため。

この窮状を救うため半ば強引に開拓事業を推し進めており、先住民族は僻地に追いやられ気味。

同じく住処を追われた竜や原生生物が人を襲う事件が多発している。

 

蒸気機関と共に発展を続け、現在は世界最大級の装甲列車や機械兵器で武装した《暁光庁》など、強大な軍事力を有するに至っている。

また、中流階級以上の家庭には必ず一つは動力源となる蒸気機関が設置されるようになっており、人々は暖房などが完備された環境で不自由なく暮らしている。

 

政治は各都市を統治する辺境伯とアルフマン皇家による合議制の《人類連邦政府》により左右されている。

だが、都市ごとに機能が独立していることから辺境伯が自治権を主張し、半独立国と化しているところも珍しくはなくなってきているらしく、都市間で紛争の危機が高まっている状態である。

七都市連盟

黒海の東海岸沿いのラーロス州と内陸のアドナイシェ州、そして東ゼニス海沿いのルーサハール州に点在する自由都市の通商連盟による連合国家。

東大陸人の首都《蒼海都市ヴィツェラニタ》や、亜人の首都《鬼岩都市カラド・ティルフィング》など七つの大都市を中心に成り立つことが由来。

二つの大都市から名をとって『セラス・ヴィタ・カラド』とも呼ばれる。

 

女子を代々の皇帝に仰ぐアシュレイ皇家が中心となって興した国で、国土の大部分を竜の一大生息圏である《ドラグノフ連峰》に覆われていることから、竜と深く関わってきた歴史を持つ。

 

このため竜の生態に精通していることから、開拓以上に単純な研究と交流が目的で土地の開発を進めている。

その反面、物資の乏しさ・環境の過酷さから軍事力には乏しいため、《人類連邦》の強硬策に大胆に打って出ることができないという構図が出来上がってしまっている。

 

蒼海都市に本部を置く《連盟評議会》に列挙される各都市国家の代表者と、それを補佐する軍事機関《七旗隊》に支えられて成り立つものの、強力な兵器で武装することができないため、一般的な軍人はまだ紋切型の騎士そのままの姿を維持しており、やはり軍事力では西大陸にはるかに劣っている。

 

現在は主要都市を中心に蒸気機関が普及し始めてきたものの、それでも西大陸にはだいぶ遅れており、上流階級でも大半は各都市各地区に設置された巨大な蒸気機関から動力を得ているのが現状。

また、普及したばかりということで定期的に休ませ検査する必要があり、夜間の使用は基本的に禁止されている。

魔塔都市(カダス・ミトス)

漫画の主な舞台。 大陸のほぼ中心に位置する、およそ50年の歴史を誇る自由都市。《人類連邦》にも《七都市連盟》にも属していない中立都市国家で、鏡のように美しいカダス湖に面した峡谷であることがその名の由来。

『ミトス』とは古代語で『風の集まる地』という意味。

 

雲を突き抜けて伸びる巨大な古代機械の塔を起点に八方に走る城塞跡と、断崖絶壁に張りつくように形成された市街地、そしてその間を縦横無尽に走る導管や鉄橋が独特の景観を形成していることで有名。

 

この塔は蒸気機関ではない謎の力で今も稼働し続けていて、なぜか周辺一帯を温暖に保つ力を持つため、これに寄り添うように人々が集まって都市が形成された。

 

《大陸横断鉄道》の軌道から外れている上にその独特かつ複雑な都市構造から、住みづらいイメージを持たれることもしばしば。

しかし、周辺が竜の生息地と隣接している上、世界の中心に位置し東西どちらにも行き来するのにも利便性が高いため、空運業は他に類を見ない発展ぶりを見せている。

 

また、竜にとっては極めて飛び甲斐のある環境であることから親子連れで飛び回っている姿を間近で眺められるということもあり、その独特の景観もあいまって現在では観光地として有名である。

 

断崖上部は《上層区》、中部は《中層区》、下部は《下層区》と呼ばれているのだが、階級によって地区の出入りや居住などに特に制限がかかることはない。

ただし治安は下に行くに従って悪くなっていく。

 

蒸気機関の普及率は東西の中間。

上流階級が住まう邸宅備えつけのもの以外の家庭用蒸気機関は一定の区画ごとに設置され、一部の区域は22時から6時までの稼働が禁じられている。

 

《カダス大学群》と呼ばれる大学の他、個人の私塾や職業訓練目的の上級学校などが幾つか存在するが、程度は中堅くらいなのでより上を目指すなら都市を出る必要がある。

竜便屋(グライダー)

竜の背にまたがり、空運を一手に請け負う者たちのこと。狩猟や競技飛行、代筆業、都市警備、引っ越し、時には合法スレスレの商売にも手を出す。

大陸中に拠点を置く《東西航空組合(カンパニエ・エアル・ルスニキエ)》の庇護下の元、法に縛られない独自の活動を展開しており、荒くれ者も多いことから世間一般ではアウトローという認識。

 

蒸気機械の発展によって運送手段がお手軽な機械に取って替わられ、縮小が目に見えている業界の一方、竜と上手くやっていければ経歴は問われないため、西大陸では社会不適合者の行き着く先、いわゆるマフィアやギャングと変わりない扱いを受けることも多い。

実際、腕っぷしが強い下町気風の男が多い。

 

ただ、原生生物や天候に左右されない安定した輸送手段が実現に至っていないため、その影響力は大陸全土に及んでいる。

また、法整備された現在はスポンサーの協力を得た上で「公益事業」であることを証明しないとおちおち飛べないので、ちゃんと東西の許可を受けたクリーンな活動を心掛けている。

 

一方、非常に矜持の高い竜は気骨やら何やら認めた者でないと共に飛ぶことを許してくれないので、竜に理解のある東大陸では「竜と共に空を駆けることを認められた名誉ある者」という認識。「雄大な空と海の二つがその心を洗うため、身なりは汚いが心根は爽快かつ痛快である」と評価されている。

 

ちなみに、竜便屋と共に飛ぶ意志を示した竜は業界用語では『相棒(アゴートー)』と呼ばれ、その証である角輪や耳飾りをつける。

竜は飛ぶことを武者修行と捉えることから、基本的に力を貸すことには協力的である。ただ、それゆえにより良い修行の友が現れるとあっさり鞍替えするというのは稀によくある話。

また、疲労は蓄積するものの人間よりはるかに頑強なため、一日寝ずに動き続けただけでは根を上げないことから人間の方が参ってしまうことも。

こうした気質から、特定の竜便屋一人と専属契約しているという例は滅多に存在せず、また契約という目に見えて分かりやすい形を取っているケースも少ない。

 

竜を統括する東西航空組合と竜の間には相互協力を約束する規定が設けられているが、竜便屋と竜の間には口約束程度の拘束力しか存在しない。

人間に近しく、さりとて決して人間と相容れることのない竜と向き合うために、竜便屋たちは常に彼らとの適切な関係性の構築に努めることを求められるのである。

隻眼の灰鷹(ジャンゴ・イル・ブレア)

航空運送会社の一つ。通称「ジャンゴ社」。魔塔都市本社事務所を拠点に大陸中で活動を展開している。

擁する従業員数は50名程度、竜数は30頭程度という小規模な運送会社だが、竜便屋の本拠地である魔塔都市の誕生と共に興ったという長い歴史を持つことから、地元魔塔都市では「老舗」として有名。

「蓮の台の半座を分かつ」「自由喜捨」など古き良き慣習を今なお維持する、荒っぽくも気風が良い古き良き竜便屋像そのままの従業員が大多数を占めることもあって地元人気が非常に強く、顔も広く、魔塔都市周辺の空運をほぼ全て取り仕切っている。

他の航空運送会社との仲介を務めることも多い。

 

ちなみに「蓮の台の半座を分かつ」とは、正社員として認められた者は幹部陣及び相棒となる竜と蓮の台の半座を象った杯を交わすという習わし。

これは古来「善悪に関わらず運命を共にする」という意味合いがあり、竜便屋として仕事に従事し続ける限り、あらゆる庇護を受けられるというもの。いわゆる「持ちつ持たれつ」の関係を約束するもの。

この誓いにより構成員は「家族」であり「義兄弟」という扱いを受けるため、非常に結束が強いことでも知られている。マフィアじみていた頃からの古い慣習である。

これと「自由喜捨」精神により、いわゆる「社会の受け皿」としても機能している。

 

ただ、治安維持の見返りとして密輸やシマのみかじめ料徴収が密かに横行しているのだが、これは意外と知られていない事実。

しかしながら、竜便屋の存在が治安維持に直結する地域ーー特に東大陸では心付け(チップ)として半ば公然と認可されているし、竜便屋たちもそこまであこぎな真似はしない。

産業革命の煽りを受けているため、密輸やみかじめ料がないと食っていけないという苦しい財政状況がわりと認知されていることも影響している。

霊素(ルフ)

この世界の大気に含まれている神秘の元素。言霊の力=霊威によって変質し、天地・万物を生成・発展・完成させる力を持つとされる。いわば魔法の源。

古代の人々はこれを機械の動力として用いる超文明を築き上げ、大いに栄えたという。この大陸にはその痕跡があちこちに見受けられる。

 

だが、竜の出現と前後して唐突に技術が失われてしまった上、元素の一種として空気と同化しているため、通常の人間には見ることも感じることもできない。

このため、この世界には魔法に相当する術は存在するが、霊素を変質させる『古の言葉』を知る竜しか行使することができない状態となっている。

 

実は酸素と似た性質を持ち、濃度が高くなりすぎると人体や自然に悪影響を及ぼす――正確には凄まじい精気に耐えきれず霊素に溶けて変異してしまう。

一部地域には異常発達した植物や極寒の大陸には存在し得ない植物の群生地など、自然の法則では成り立たない光景も見受けられるのはこの影響である。

霊脈(ルフ・カーム)

この世界の上空、雲の上を流れる膨大な霊素の奔流のこと。

霊素は普通は肉眼では視認できないのだが、濃度が高まればそれが結晶化し、宙に舞う光の花弁のようなものとして目に映る。そのため霊素の集合体である《霊脈》は昼夜を問わず銀河のように輝いていて、光る花弁が嵐のように吹き荒れている。

伝承によると、この星の大地に生まれ来る数多の生命はこの《霊脈》から命を授かり、死すると再び大河の一部となって流転し続けるらしい。この関係から『母なる大河』と称し、東側は特に信仰の対象とする地域が多い。

《愛し児たちの島》上空にも縦横無尽に走っている光景が見受けられる。

大ティアマット帯

東西を隔てている巨大なウインドシア。

ウインドシアとは垂直方向または水平方向に風向・風速が劇的に異なる乱気流のこと。

 

東西から吹き込む風と海風の三つが混じり合うことで激烈な乱気流となっており、このことから伝承に登場する三つ首の竜になぞらえてこう呼ばれている。

この大ティアマット帯に限らず大陸中、特に東大陸で猛威を振るう強風域はティアマット帯と呼ばれる。

 

この下の海峡、通称《黒海(カラ・デニズ)》は乱気流の影響で常に荒れており、これらが長い間東西の交流に歯止めをかけていて、かつては竜便屋や竜たちの力を借りるしか東西を行き来する術がなかった。

 

 

この大ティアマット帯や世界事情の影響で、空運とは対照的に海運は全くと言っても良いほど発展していない。

最近になってようやく世界は丸くひとつながりになっていて、海の向こうには他にも大陸が存在するという事実が判明したものの、いまだに世界には果てがあると信じている者の方が多い傾向にある。

蒸気機関

この世界で使われている機械の動力源。(画像は携帯用の一般的な小型蒸気機関)

基本的な仕組みは我々の世界における蒸気機関とさして変わりないが、なんかファンタジー的なあれそれのおかげで内部構造はブラックボックス、生み出せる圧力は無限大である。

 

大型化に比例して場所を取ってしまうものの、空気がある限り無限に燃料を精製することができる。

 

蒸気機関が発達したのは、資源が不足しがちな反面、鉱山資源が豊富で、竪穴を掘り進める過程で溜まった水を処理する方法に困ったこと。

そして周囲を海に囲まれていることから水には困らないことが大きな要因である。

蒸気銃

資源に乏しい《愛し児たちの島》では上質な火薬の大量生産が見込めなかったため、蒸気機関が生み出す圧縮空気の力で何でも弾丸にして発射する蒸気銃の仕組みが急速に発展することとなった。

感覚的には弾込め式の銃に圧縮空気による発射機構を取り付けたような感じ。

 

ハンマーを引かなくても良いので即座に発射できる上、反動も意外と少ないのだが、携行可能な蒸気機関が生み出せるエネルギーには限界があり、射程は約400メートル。

威力も火縄銃より少し強い程度となっている。

 

 

現在の技術力ではコスパは悪く、連続で使用し続けるとオーバーヒートしてしまう。

このため基本的には対人用とみなされており、一般的には護身用/信号用として出回っている。

 

 

なお、何でも弾丸にできるためその辺の小石や、タバコの吸殻を束ねたものさえ発射できる。

完全環境都市(アーコロジー)

パイプが張り巡らされた硝子状のドームと装甲壁で上部及び周辺を円形に覆い、地下や街中にもパイプが縦横無尽に走っている機関都市形態。 そのパイプ内に熱源となる高温の蒸気を流すことで融雪・寒冷化対策をとっている。 

西大陸のほとんどの都市はこれ。

 

蒸気機関のおかげで一年を通して安定した気温が保たれているのだが、都市中が蒸気機関の排煙で満ちているため呼吸器系に異常をきたす子供が増加の一途をたどるなど、弊害も多い。

 また、空も常に煙で覆われていることから、絵本でしか空を見たことがないという者も多い。

 

ちなみに、西では動力源となる蒸気にはいわゆる電気代として多額の税金がかけられているため、それを免れようと政府に内密で勝手にパイプを繋げて動力を得ようとする輩も少なくない。 

もちろん違法行為である上、吹き出す蒸気に触れれば火傷どころでは済まないので大変危険。

飛空艇について

スチームパンク産業革命期を迎えた世界だが、飛空艇はまだ存在していない。 理由は2つ。技術が実現可能なレベルまで達していないのと、風が非常に強いため。 《大ティアマット帯》の存在があるためである。

東大陸などは《ティアマット帯》という小規模な乱気流があちこちに吹いていることもあり、生半可な飛空艇ではすぐに壊れてしまう。

 

しかし、人間は浪漫を追い求める生き物であり、飛空艇とは浪漫の塊である。実現に向けた開発は西側において国家プロジェクトで進められている模様。

東西の格差問題

実は空については東西で認知が全く異なる。

 蒸気機関が発達した西側は現在、全都市が硝子状のドームと装甲壁で覆われた完全環境都市になっており、寒冷対策が万全にとられている反面、都市中に蔓延する蒸気の影響で空が見えない。

 なので西の人間、特に子供は空を絵本などでしか知らない者が大半を占める。

 

一方、東側は蒸気機関技術が進んでいない反面、普通に空が見える。 なので西側育ちの子供には蒸気に覆われていない世界、空や外の世界に対する憧れが強い子供が多い。 登場人物ではキリオとライの兄妹が当てはまる。

東側は東側で年中雪に覆われているため、寒さに悩まされることのない西側に対する憧れが強いという事情もあるのだが。

 

倫理観なども東西/種族でだいぶ異なる。

 まず、西大陸の人間は蒸気機関文明のおかげで先進的な考え方を持つが、生活が一つの都市で完結しており一生外に出ないで過ごす者も少なくないため、いわゆる非科学的な物事にあまり関心がない。

また、竜や原生種は都市外にしか暮らしていない上、諸事情で西側を統括する《人類連邦》は竜の存在を国民に秘匿しているため、西大陸の人間の大半は竜を「空想上の生き物」だと思っている。

それ以外は、一般的な死生観/道徳観などの感覚は現代人に比較的近い。

 

それに対し、東は整備された生活圏が数えるほどしか存在せず、多くの人間が厳しい環境に揉まれて生きているため、簡単に言うと中世的。 自然界の物事に畏敬を抱きながら、明日も無事に朝を迎えられることを祈りながら一日一日を大事に過ごし、前時代的な慣習に則って生きている。

また、竜を「風と共に恵みを運ぶもの」として信奉する教えが根付いている。 なぜかというと竜は倒すのも一苦労だが、その身体は宝の山、すなわち「商機」であり、討伐から解体から調理から果ては切り分けられた素材の卸売りに至るまで、実に様々な職種の人々の力を借りなければならないから。

それが一つの集落を形成できるほどの「雇用」を生み出すからである。

 

 そのため東には竜を礎として形成され、記念にその竜の名前を冠している集落が非常に多い。

また、扱いを間違わなければ竜便屋の翼として運輸に協力してくれることもあり、基本的に竜に対してとても友好的である。

 

要約すると、西大陸は経済的に豊かで都市内だけでほとんどの機能が賄えるところが多く、他の都市と交流する必要性が特にないため、蒸気機関の存在もあり「外」に関心を抱く者が減少傾向にあるとされているが、東大陸は自然に寄り添っていかなければならないほど貧しいためそうではない、ということ。

この格差問題に加え、数年前に東西を横断する巨大な鉄道が開通したばかりの頃、大規模な脱線事故が起きて甚大な被害が出たこともあり、現在、東西間は緊張状態にある。どうなることやら。

 

ちなみに、東大陸の人間が信心深いのは東に多く住むダーナ人の存在も関係している。 この大陸が生まれた頃から住んでおり、大陸古来の自然信仰を継承し続けている彼らは竜を「自然現象の代弁者」として神格化していて、彼らが詩によって竜との接し方を教え広めたからである。

竜との付き合いが長く、同じく東大陸に多く住んでいる種族にはアラゴ人もいるが、彼らはけっこうさっぱりしていて生活のためなら竜を糧にすることにも抵抗がない。

しかし、彼らの知恵と技術もまた人に牙向く質の悪い竜が現れた時に大変役に立っている。

実はこの二つの種族が西の人々とのいざこざの果てに現在はほとんど東に移住してしまったことも認識に偏りができた遠因。

 

余談だが、西は生活レベルがほとんど現代と変わらないが、 「異性の親とお風呂に入ってはいけない(一緒に入浴すると性的虐待とみなされる)」、「家族といえど子供の裸の写真を撮影、所持してはならない(幼児ポルノとみなされる)」 など、性に関しては敏感で制約も多い。

対して、東はユニットバスどころかシャワーだけしかない、もっとひどいところでは大衆浴場しかない、などなどの関係でそのあたりの認識はわりとガバガバ。

なので東西の人間がもう一方の地方へ行くとまずお風呂事情でカルチャーショックを受けることになる。

トイレ事情

こちらも東西で格差がある。基本的にはヴィクトリア朝くらいの時代背景にスチームパンク産業革命期要素が加味されている状態なので、西側は発達した水洗トイレが充実している。

が、蒸気機関が発達していない東側はそうでもない。特に田舎の方は。具体的に言うと江戸時代頃の日本みたいなことをしていて汲み取り業者などもいたりするのだが、けっこう汚い話題なので興味がある方は江戸時代のトイレ事情を調べてみてほしい。

 

ちなみに、東大陸に限ったことではないのだが、常に清潔に保たれている公衆トイレは有料の場合が多い。入り口に門番みたいに待機している清掃のおじさんおばさんが入ろうとするとチップを要求してくるのである。良い商売である。

 

なお、東大陸は寒すぎて便座に数秒座っているだけで凍傷になりかねないので、便座には凍りにくい素材ーー特にヘラジカの毛皮や竜の革をなめしたものが好まれる。人類の臀部は竜が支えているのである。ワオ。

歯医者

スチームパンク産業革命期ではあるが技術の進捗具合はてんでバラバラで、例えば歯磨き事情。中世ヨーロッパくらいの発達度なので、木の棒の先端を細かく割いたブラシ状のものでこすったり、薬草を染み込ませた布でこすったり、口の中を清潔に保ったりとかのレベルで、残念ながら歯磨き粉という便利なものは発明されていないので虫歯はとてつもなく恐ろしい病気扱いされている。

このため歯医者の需要が非常に高く、貴族の間では輝く白い歯を保つための調合薬の需要が高い。牛の骨を歯の形に整形したものを埋め込む義歯もすでに登場しているが、中には遺体から義歯を作る業者もいるとかなんとか。

 

なお、明確な治療方法が確立されているわけではないため、この世界では歯医者と呼んでも通じない。その手の人々は抜歯屋と呼ばれている。色々とお察しである。

 

ちなみに、アラゴ人は痛みを訴えるのは弱さの証、と信じる文化があるので、医者に歯を抜いてくれと頼むのは社会的地位を失うほどのダメージを受けるらしい。

 

槍城都市-百花都市間脱線事故

史上初にして最悪の鉄道事故。西大陸の人々の間では鉄道の名をとって俗に『クンツァイト号事件』とも呼ばれる。

「Doravoooore!!」本編開始時点から遡ることおよそ3年前、槍城都市と百花都市を結ぶ鉄道が規定速度超過の果てに脱線事故を起こし、付近の谷間に落下し、一部車両が崩落した山の岩盤に埋もれてしまったことで多数の死傷者・行方不明者を出した。

行方不明者の中には今なお発見されていない者も少なくない。

 

当時は急造された鉄道路線が大陸各地に配備されたばかりであり、急ごしらえの車体はもちろん、運転士確保のため採用ラインがいたずらに引き下げられたり運行スケジュールも試行錯誤かつ調整不足だったなど多数の問題を抱えていて、それらが重なったことで起こるべくして起きた凄惨な事故であった。

 

ただしこの事故における一番の問題は、列車の製造に携わった槍城都市側と運転士の出身地であった蒼海都市側が双方に責任を押し付け合ったことである。結局アルフマン皇家とアシュレイ皇家が謝罪表明を出すまでそれなりの時間を要し、その分救助活動が遅れてしまったことで人々の反感を買ったのは言うまでもない。

アラゴ人

またの名を『牙狩りの民』。獣に似た顔立ちと特徴を併せ持つ戦闘民族で、寿命は人間の1.5倍ほど。

それに比例して老化の速度も遅く、1.5倍ほどの速度でゆったりと年をとる。

 

大まかに分けて人狼と猫人という二種類が存在し、人狼は若干血の気が多く、猫人は温厚だが縄張り意識が強い。

実力主義社会で好戦的なため、というか素材が金になることを知っているため、竜に挑むことを神聖視すると同時に生活の一部としており、竜を打ち倒すために一生をかけて研鑽を重ねる。

竜に勝利した証として売り物にならない余った牙や角、革を飾り物に仕立てるという習わしがあることが名の由来。

 

特に革は《一枚革靴(モカシン)》や、独自の模様を描く《綴織(タペストリー)》に仕立て上げる。

竜の見目、強さ、革の色&質感&凹凸といった革の表情、そして彼らに伝わる独自の法則を考慮して加工するため、一つとして同じものは存在せず、共同体には必ずこの綴織を飾るためだけの施設が存在する。

 

牙飾りは持つ者が死した場合は生まれた地の墓に飾り立てるのが伝統であり、死した場合は仲間や見届け人に送り届けてもらうことになっているため、基本的には市場に出回ることはない。

出回っている場合、それは不当な手段を用いて奪い取った可能性が高いので冒涜行為とみなされること請け合い。

 

なお、狩るとは言っても殺めることまではしない。下手に殺めると生態系のバランスが崩れる、そもそも完全には殺せない、などの理由による。詳しくはDragon-竜(ドラッヘル)生態報告書-を参照。

 

ちなみに恋愛観も独特で、女性は自分より強い男性としか結婚しない。強ければ強いほどモテるが、それに比例して結婚相手が少なくなるとか。

かつては大陸全土で暮らしていたが、血の気の多さに加え各地で迫害を受けた歴史から、人間の多い共同体で彼らを見かけることは極めて稀。

ちなみにダーナ人と近いが微妙に異なる言語を使うが、昔覇権争いをしていたという関係・竜を狩る文化を否定され続けているという関係で仲はあまりよろしくない。

【命名制度】

『○・□△』といった感じに区切り、姓を持たない。これは彼らの言語における名詞+形容詞(動詞)の組み合わせ。

また、姓を持たない代わりに称号を持ち、『称号=○・□△』というのが正式名。この称号は彼らの言語における森や河川など自然物の象徴で、いわば出身地を意味する。

ダーナ人

またの名を『渡り鳥の民』。男女共に一羽の猛禽を従え、家畜の群れと共に各地を渡り歩く遊牧民族。

長身痩躯と中性的な容姿、長く尖った耳が最大の特徴。寿命は200年程度で、成人するまでは普通に年をとるのだが、それ以降は20代~30代の姿のまま150年以上も生き続ける。

 

一支族で一種類の猛禽類を飼うことから支族ごとに鳥の名で呼び分けられる。

例えば犬鷲を飼うのは犬鷲一族(イスカンダル・ダーナ)、大鷹を飼うのは大鷹一族(アルタイル・ダーナ)といった感じ。遊牧の時期や細かい慣習も支族で異なるがここでは端折る。

 

性格は勇猛果敢かつ高潔。戦いの場において決して膝を折ることはない。ただ、『無謀は無能のすること』と理解しているため勝ち目のない戦い忌避する傾向にあり、十度戦って十度勝てる相手としか戦わない。

また、自然界の頂点に立ち貴重な恵みをもたらしてくれる竜を信奉する信心深い一族でもある。

 

男女を問わず騎馬と騎射に優れ、15歳になると成人の儀式として鷹狩りに出かけるという慣習がある。

 

また、鳥の羽や装飾品で服を飾るのが伝統で、こうした小物を作る腕を競い合う恋愛観を持つ。特に女性の地位が高い社会のため、女性は手先が器用な者ほど異性にモテる。このため、正反対の女性は物珍しがられる傾向にある。

 

大昔は大陸の支配者的存在だったが、人類連邦の圧政に堪えかね現在は大多数が東大陸に移住しつつある。特に犬鷲一族は西大陸人を敵視する傾向が強い。とても難解な言語を使うため、人間とは意志の疎通が難しい。

また、竜に対する態度の違いからアラゴ人とは犬猿の仲である。

【命名制度】

『ABB・ABorCB・□□=○○○』という、韻を踏むような独特な命名制度。

例のように通常は略称で呼び合う。どういった文字列の組み合わせになるのかは一定の法則があるのだが割愛。

『○○○』に入るのは一族内での立場を現すもので、男女か未婚か既婚かで四種類ある。

竜葬

東大陸の多数の地域、特に高山地帯で慣習化している葬儀方法の一つ。その名の通り竜に死体処理してもらう葬儀方法のこと。

杉の木以外の樹木がほとんど生えないため薪の確保が困難であり、かつ寒冷であることから土が固くて穴掘りも手間という事情から広まることとなった。

 

また、微生物による分解も完全には行われないという事情から、伝染病の死者を放置することによる病原体の拡散を防ぐという目的もある。

 

鳥葬と異なり、竜は骨も残さず喰らい尽くし栄養源とするため、死体処理が極めて楽ということもあって古くから東大陸ではこの方法で葬儀が執り行われてきた。

 

竜を神聖視する宗教観とも深く結びついており、これには、多くの生命を奪い喰らうことで生きてきた人間が、魂が抜けた肉体を他の生命ーー特に世界を構築する霊素と密接な関係にある竜に布施することで、世界に力を還元し、死後も心身の安寧を願うという意味合いが込められている。

東大陸の各地には、この竜葬を行うために整えられた儀式めいた舞台が点々と存在し、『弔いの壁』と呼ばれる洞窟も併せて造られている場合が多い。

 

東大陸は死体は大地に、魂は天に還るという死生観から墓碑を作るという文化自体が存在せず、ただ名前と共に死んだという『記録』だけが残される。その名を刻むのがこの弔いの壁である。

ただ、刻む名は次の輪廻を無事に迎えられるようにという祈りを込めた特別な名を古代語でつけるのが伝統とされている。

 

ドーム状に削られた暗い洞窟内に無数に刻まれた死者の名は星空のように輝き、物寂しくも幻想的な光景が広がるという。

(場所によっては一般開放されており、観光もできる)

 

いつの頃から儀式として手順を踏んで執り行われるようになったかは不明だが、場を整えているのは、付近を住処とする竜に『供物』であると分かりやすく示すためでもあり、繰り返される葬儀でそう認識した竜たちは迷いなく一思いに喰らってくれるだろう。

基本的には集団で葬儀を執り行うため、葬儀の日には大群となって竜が押し寄せる神秘的な光景を目にすることができる。